いるいる、思い当たる節があるという方も多いのではないだろうか。

「クラッシャー型上司」という言葉をご存知だろうか。本書『クラッシャー型上司』(松崎一葉著・PHP新書)によれば、«部下を精神的に潰しながら、どんどん出世していく人»だそうだ。

その「クラッシャー型上司」にも様々なタイプがいる。食事やトイレも同じタイミングの「つきっきり指導」タイプ、ネチネチと攻めていく「表情ひとつ変えない雪隠づめ(=相手を逃げられない状況まで追い込むこと)」、悪意を持って部下を攻撃する「薄っぺらなクラッシャー」がいるという。

過去、体育会系の上司数名と仕事をしたことがある。部下を見せしめのように大声で「指導」し、それを他の社員は見て見ぬふり。上司の上司、すなわち役員は「あいつはよく指導している」と見て、上司はさらなる出世街道を驀進する。彼等のようなタイプこそ「クラッシャー型上司」といえるのではないかと思うのだが、著者に尋ねたくなる。

終身雇用制度が崩壊し、某大手重電メーカーT社が「利益水増し」という名の粉飾決算に手を染め、燃費不正に揺れた自動車メーカーのM社がN社の傘下に入るなど、大手=安心とはいえない時代になって久しい。大手広告代理店D社の若手社員の過労自殺、大手電力会社K社などの大手企業の長時間労働が次々と明らかになってきた。働く人々の労働環境は厳しさを増すばかりだ。人々のメンタルが疲弊していく中、行き過ぎて利益や儲けを追い求める限り「クラッシャー型上司」がいなくなることは、考えにくいだろう。

であるならば、どうすればいいのか。自分で自分の身を守るしかないのだと著者は言う。「はいはい」といったん受け止めて共感し、受け流す。これができればだいぶラク。こういったことが難しく、精神面や身体面に不調が見られるようなら、カウンセリングや医療機関にかかるのがいいかもしれない。

だが、皮肉なことに「クラッシャー型上司」こそ、カウンセリングや医療機関を受診しなければならないのではないだろうか。「匂いを元から断つ」というわけではないが、「クラッシャー型上司」の病理を解明することこそが、大事なのではないか。そう思わせる一冊だった。

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